個々人の姿勢を見せる

過重労働は我が国における社会全体の課題だが、特にエンジニアの長時間勤務や無休労働は特に深刻である。厚生労働省は改善策として有給取得の促進、労働時間の適正な把握などを促しているものの、過重労働による健康被害やうつ病の発症は後を絶たない。社会のIT化が急速に進行する現代において、エンジニアの需要がますます高まる一方で、人材不足が深刻化していることも過重労働が減少しない原因である。
エンジニアには、専門分野への幅広い知識や経験はもちろん、専門知識のないクライアントにも分かりやすくシステムの説明ができるコミュニケーション能力も求められる。特にグローバル化が進行する中では、海外のクライアントと英語でコミュニケーションができる人材が必要とされている。しかし、現代社会で必要なのは専門的な技術や能力の面にとどまらない。何よりも必要なのは、自分の健康を保全する自己管理能力、または危機回避能力など安全を守るためのものだ。
例えば1日の労働時間を記録したり退勤管理ソフトを利用することで、現在の労働環境を把握することができる。また、自分の体力を正確に把握する能力があれば、健康被害につながるような過重労働を回避できる可能性が高まるのだ。業務に必要なコミュニケーション能力を挙げたが、これは労働環境改善を外部に訴え、現状への理解を求める際にも重要になる。そして、個々人が自分の労働環境を改善する姿勢を見せることが、社会全体の労働環境改善につながるのである。